共感こそ幸せ。
こんにちは、知美です。
サンプル製作終盤となり、いつも以上に神経質になっているデザイナーに代わり、今週も私から、アトリエの状況をお伝えしたいと思います。
毎度の事、新作をコツコツと自社で製作していくのですが、初めからいいものが出来る訳ではありません。
生地や仕立て、型紙や仕様、すべてが実験なのです。
初めて行う事、そしてゴールが見えない事へ対して研究を重ねるために、お金も時間も労力も気力も人力も多大に必要です。
そして中でも難しいことは、目に見えない空気感を気遣うこと。
これは、私の使命だと感じているくらい、すべきではないけど、しなければならない項目です。
「山内」では、いつも代表的な大物アイテムから決まっていくのですが、今回は珍しく、なかなかOKがでませんでした。
繰り返し、繰り返し、何度も何度も作り変えて、それでも作って作って作って。
コレクションを発表しているブランドとして、毎シーズン、関わる人や、その時のデザイナーのリアルタイムな『気分』というものが必ずそこには存在します。
それは、非常に敏感で浮遊したものだからこそ、それを守りたい。そんな気持ちで同じ空間を恐る恐る共にしているような感覚です。
無言だからこそ、通う心。
未完成の闇をじっと耐え、苦い思いを静かに共感してこそ、一層、歓びが感じられるのではないかと思う瞬間がありました。
遂に、かっこいいコートが出来上がりました。
ファッションは自己表現だと言われるかも知れませんが、それを超越できるなにかに達することができたらいいなと感じています。
作 / 山内 知