本物を求めて
初めまして。
この度新しく山内の一員となりました倉員(クラカズ)と申します。
私は元々大学で建築を専攻していましたが、同時に有志でファッションショーを行う集団にも所属していました。
ショーで使う衣装のデザインを考えそれらを皆で研究しながら作っていく、そんな経験から徐々に服に興味を持つようになりました。
それらの経験の中で出会った一つの問いかけが自分の服に対する見方を大きく変えました。
「衣装から服へ昇華させる」
自分達が作っていた衣装はショーの瞬間に成立するものであり、ステージを降りた際には成立しません。
衣装から服へ昇華させるためには、本物の服ではない衣装と本物の服の境界線がどこにあるのかを見つけなければなりません。
細部のクオリティが高ければ本物になるのか
上質な生地を使えば本物になるのか
裏が収まっていれば本物になるのか
専門的に服作りを学んでこなかった私に当たり前のことは何一つなく、服について考える際常にその問いかけが頭の隅にありました。
この問いかけは自分の作る服だけでなく世の中に溢れている服についても同様について回りました。
ファッション(=流行)の世界では時に服は情報として扱われているように感じます。
写真の中に映る色と形、そしてその下に記された説明文。
それらが服の全てでありそこには本物・偽物の区別がないように思えます。
実際の生地を見て触ることでその質感や硬さを感じ、
着用することでその重みや体との合わさり方を体験する。
服に限ったことではないですが、本物であるかどうかはそうして初めて分かってくるものではないかと思います。
今でも本物の服の境界線は見つかっていません。
しかし答えが見えずとも常に本物を求めて服と向き合い続ける、
その姿勢を貫くことが本物の服を生み出すことに繋がるのではと考えています。
最後に今月25日(日)まで山内ギャラリーにて23SSの名古屋展をおこなっております。
写真だけでは伝わらない山内の服の魅力を是非ともギャラリーにてお楽しみください。
作 / 倉員