次の秋冬からウールを使用します。

「山内」は、羊に対して行う※ミュールシングに反対しているため、今までウールを使用していませんでした。

オーストラリア以外の国ではミュールシングを禁止しているため、オーストラリア産以外の羊毛で紡績をして生地を織る事を模索していましたが、

羊毛の紡績の段階で、色々な産地の羊毛をミックスして糸にしていくので、その中のオーストラリア産の羊毛だけを省くというのは、個人レベルではなかなか難しい課題でした。

 

元々私の住む名古屋のすぐ近くには、毛織物の産地「尾州」があります。

そこで一人の機屋さんに出会ってから、急速に話が進みだしました。

 

その機屋さんは創業100年を越し、今でも超低速自動織機のションヘル織機で生地を織っています。

今では生産性の悪い低速織機は生産中止され、高速織機が普及しています。

しかしそのションヘル織機は、手織りの原理を動力化したシンプルな構造ですから、繊維をいためる事なくやさしくゆっくり丁寧に織り進めていくため、

経糸の張りも緩く遊びがある分、手触りが柔らかく、しなやかで最高品質の生地を織り上げる事が出来ます。

その機屋さんの生地は、天皇陛下、皇太子さまのスーツ地として使用されていることからも品質の高さが証明されています。

 

その由緒ある機屋さんの協力で、羊毛の段階で証明書を付けて頂き、ミュールシングされていない羊の毛のみを使用して織り上げて頂く事が出来ました。

 

最初はこんな歴史と技術がある機屋さんで、この話が進むとは思ってもいませんでしたが、

私の話をとても興味深く聞いて頂き、「やってみましょう、少し時間下さい」と即答でした。

 

人を育て、技術を伝え、継続して行く事、また、その時代時代で今までとは違う方向をも模索するということは、本当にパワーがいる事だと思います。

それを100年も続けてこられた機屋さんだからこそ、私個人の話でも真剣に力を貸して頂けたのだと思います。

 

今手元にあるこの生地を使い、何を作るか毎日楽しみながら考えています。

次の新作の秋冬は今月末、来月初旬完成を目標としています。

またこのブログで完成間際にお伝えしますので、よろしくお願い致します。

作/ 山内

 

※ミュールシング (英語 mulesing) は、羊への蛆虫(クロバエ科のヒツジキンバエなどの幼虫)の寄生を防ぐため、子羊の臀部(陰部と表現されることもある)の皮膚と肉を切り取ること。